日常的にオンライン英会話を続けているにもかかわらず、いざ本番のEarnings Callや投資家ミーティングになると、まるで別世界の言語を話しているかのような感覚に陥る。
この「英語のズレ」こそが、株価や企業価値に直結するIRコミュニケーションの最大のリスクなのです。
Contents
なぜ”IR英語”は特殊なのか──一般英会話との決定的な違い
IR独自の語彙とコンテキストの壁
IR(Investor Relations:投資家向け広報)における英語コミュニケーションは、単なる「ビジネス英語」の延長線上にはありません。
財務知識、法的リスク管理、そして戦略的広報が高度に融合した、極めて特殊なスキルセットが求められる領域です。
IR担当者が日常的に扱う用語を見てみましょう。
EBITDA(償却前営業利益)、EPS(一株当たり利益)、YoY(前年同期比)、Guidance(業績予想)、Forward-looking statements(将来予測記述)──これらの専門用語は、一般的な英会話教材には登場しません。
さらに重要なのは、これらの用語を「文脈に応じて正確に使い分ける」能力が求められることです。
たとえば「Guidance」という単語は、日常会話では「案内」や「指導」を意味しますが、IR文脈では「業績予想」という極めて特殊な意味を持ち、その発言が株価を動かすほどの重みを持ちます。
投資家とのQ&Aセッションでは、「即応性」と「正確性」の両立が絶対条件となります。
「Why did the operating margin decrease despite revenue growth?(増収なのになぜ営業利益率が下がったのか?)」といった鋭い質問に対し、数秒以内に論理的かつ正確な英語で回答しなければなりません。一般的なオンライン英会話で練習する「自己紹介」や「週末の予定」とは、求められるスキルの次元がまったく異なるのです。
オンライン英会話市場の急成長と学習者の期待値ギャップ

オンライン英会話市場は過去10年で急速に拡大し、手軽さと低価格を武器に多くのビジネスパーソンに普及しました。
フィリピン人講師を中心としたサービスは、英語学習の裾野を広げた功績は確かに大きいといえます。しかし、その一方で深刻な「期待値ギャップ」が生じています。
業界関係者の間では、多くのオンライン英会話サービスにおいて長期継続する学習者は少数派であるという認識が共有されています。
学習の「習慣化」が難しく、数ヶ月で離脱してしまうケースが後を絶ちません。さらに問題なのは、継続している学習者の多くが「成長の停滞」を感じていることです。
本論:オンライン英会話がIRで役に立たない10の理由
理由1:決算用語を教えられる講師がほぼ存在しない
一般的なオンライン英会話プラットフォームにおいて、IR実務経験を持つ講師を見つけることは極めて困難です。
講師検索機能では「ビジネス英語対応」という大まかなカテゴリは存在しても、「決算説明会対応」「投資家Q&A経験」といった詳細なフィルタリングは提供されていません。
フィリピン人講師の多くは大学生や一般的な英会話講師であり、財務諸表(P/L、B/S、C/F)を読み解く知識を持っていません。
そのため、学習者が自社の業績を説明しようとしても、講師はその内容の論理的整合性や、投資家に対する説得力を判断できないのです。
「文法的には正しい」が「投資家には響かない(あるいは誤解される)」表現を見抜くことができません。
IR視点のチェックポイント: あなたの講師は「EBITDA」と「Operating Income」の違いを説明できますか?講師選びの際、金融バックグラウンドの有無を必ず確認しましょう。
理由2:Investor Q&Aの即興力を鍛えられない
オンライン英会話の多くは、事前に用意されたスクリプトやテキストに基づく学習が中心です。これは基礎力養成には有効ですが、IR実務で最も重要な「ライブQ&A」の即興力を鍛えることには向いていません。
Earnings Callの後半で行われるQ&Aセッションは、IR担当者の力量が最も試される場です。
アナリストや機関投資家からの質問は事前に予測できないことも多く、その場で論理的に考え、適切な英語で回答する能力が求められます。
しかし、一般的なオンライン英会話講師は「株主」としての視点を持ち得ないため、鋭い突っ込み(Deep Dive Questions)や、経営戦略の矛盾を突くような質問を投げかけることができません。
IR視点のチェックポイント: 「想定外の質問」に対する練習機会を意識的に設けていますか?模擬Q&Aでは、事前共有なしの質問を含めることが重要です。
理由3:Disclosure・ガイダンス等の法定表現が曖昧

IR業務における言葉の選択は、コンプライアンスに直結します。「Forward-looking statements(将来予測記述)」には必ず免責事項(Disclaimer)が伴い、「Guidance」の修正は株価を大きく動かす可能性があります。
これらの法定表現を誤って使用した場合、企業は法的リスクにさらされるだけでなく、市場からの信頼を失墜させる恐れがあります。
一般的なオンライン英会話講師は、こうした法的ニュアンスを理解していません。「We expect…」と「We are confident…」の微妙な違いが、投資家にどのような印象を与えるか、どちらがより法的リスクを伴う表現かを指導することは不可能です。
過去には、不用意な英語表現が「誤解を招く情報開示(Misleading Disclosure)」と見なされ、株価急落や訴訟に発展した事例も存在します。
IR視点のチェックポイント: 「Forward-looking statements」に関する免責事項を英語で暗唱できますか?法的に問題のない表現パターンを体系的に習得することが不可欠です。
理由4:1セッション25分の集中限界
多くのオンライン英会話サービスは、1回のレッスンを25分程度に設定しています。これは「毎日続けやすい」という観点では合理的ですが、IR英語の習得という目的には明らかに不十分です。
決算説明会のプレゼンテーションは通常30分以上、その後のQ&Aセッションも含めると1時間を超えることも珍しくありません。
25分のレッスンでは、一つのトピックを「深掘り」する前に時間切れとなってしまいます。
たとえば、「なぜ営業利益率が低下したのか」という質問に対する回答を練習する場合、背景説明、数値の根拠、今後の見通しまで一貫して説明する訓練が必要ですが、25分ではその一部しかカバーできません。
IR視点のチェックポイント: 実際の決算説明会と同じ時間枠(60〜90分)での練習機会を確保していますか?短時間レッスンの積み重ねだけでは、本番の持久力は養えません。
理由5:フィリピン英会話の発音・時差問題とグローバルIR実務の乖離
フィリピン人講師のオンライン英会話は、コストパフォーマンスに優れる一方で、IR実務特有の課題を抱えています。
フィリピン英語には独自のアクセントがあり、欧米の投資家や金融機関との実務コミュニケーションとはギャップが生じることがあります。
もちろん、フィリピン人講師の中にも高い英語力とビジネス経験を持つ方は存在しますが、一般的なオンライン英会話プラットフォームでそうした講師を見つけることは容易ではありません。
さらに深刻なのは、欧米のビジネス文化(ハイコンテクスト文化)への理解不足です。アイロニー、謙遜、婉曲表現など、欧米のビジネスシーンで頻繁に使われる微妙なニュアンスは、非ネイティブ圏の講師からは習得が困難とされています。
海外IRロードショーでニューヨークやロンドンの機関投資家と面談する際、こうした文化的ギャップが思わぬ障壁となることがあります。
IR視点のチェックポイント: 欧米の金融機関出身者からフィードバックを受ける機会を設けていますか?アクセントだけでなく、文化的文脈の理解も重要です。
理由6:KPIが出席回数のみで、成果指標が不在
オンライン英会話サービスの多くは、学習者の「出席回数」や「レッスン消化率」をKPI(重要業績評価指標)として設定しています。しかし、これらの指標はIR実務への転用度をまったく測定していません。
真に重要なのは、「Earnings Callで想定質問に正確に回答できるか」「海外投資家とのミーティングで信頼を獲得できるか」といった実務成果です。
しかし、一般的なプラットフォームではこうした成果指標を設定・追跡する仕組みが存在しません。結果として、学習者は「今月は20回レッスンを受けた」という達成感を得ても、実際のIR業務での英語力向上を実感できないままモチベーションを失っていきます。
IR視点のチェックポイント: 「EPS説明の正答率」「Q&A対応時間の短縮率」など、IR実務に直結するKPIを自ら設定していますか?
理由7:ケーススタディ教材が汎用ビジネス止まり
オンライン英会話で使用される教材は、「会議の進め方」「プレゼンテーションの基本」「ビジネスメールの書き方」といった汎用的なビジネストピックが中心です。
決算短信、有価証券報告書、アニュアルレポートといったIR特有の資料を扱う教材は、ほぼ皆無といってよいでしょう。
IRのトレーニングでは、自社の実際の決算資料や、過去のQ&Aスクリプトを使用することが最も効果的です。
しかし、一般的なプラットフォームでは教材が固定されており、カスタマイズの余地がありません。また、機密性の高い自社資料を共有することへの懸念もあり、実践的な練習が困難な状況が続いています。
IR視点のチェックポイント: 自社の決算説明資料を英語で説明する練習を定期的に行っていますか?汎用教材だけでは、自社特有の「Equity Story」を語る力は身につきません。
理由8:コレクティブ・サイレンス──間違い指摘が甘い
「化石化(Fossilization)」という言語習得用語をご存知でしょうか。これは、誤った英語表現が矯正されないまま定着してしまう現象を指します。
オンライン英会話、特にフィリピン人講師によるレッスンでは、文化的要因からこの化石化リスクが高まる傾向があります。
フィリピン文化では、相手の面子を潰すことを避ける傾向が強く、講師は学習者の間違いを強く指摘しない場合があります。
また、レッスンでは会話の「流暢さ(Fluency)」が優先され、「正確さ(Accuracy)」への指摘がおろそかになりがちです。IR英語では一語の間違いが致命的な誤解を招く可能性があるにもかかわらず、「通じているからOK」というスタンスで見過ごされてしまうのです。
IR視点のチェックポイント: 講師に「厳しくフィードバックしてほしい」と明確に伝えていますか?遠慮のない指摘こそが、上達への近道です。
理由9:外部機関(監査法人・証券アナリスト)との会話を再現不可
IR実務において最も緊張を強いられる場面は、監査法人、証券アナリスト、機関投資家といった「外部の専門家」とのコミュニケーションです。
彼らは財務の専門知識を持ち、鋭い視点で企業の戦略や業績を評価します。こうした相手との会話を練習することこそ、IR担当者にとって最も価値があるトレーニングです。
しかし、一般的なオンライン英会話講師は、こうした専門家の視点を再現することができません。
「株主アクティビストからの敵対的な質問」「アナリストによる業績予想の妥当性への疑問」といった高度なシミュレーションは、金融バックグラウンドを持つ専門トレーナーなしには実現不可能です。
IR視点のチェックポイント: 「厳しい質問をする投資家役」との模擬面談を経験したことがありますか?本番さながらの緊張感あるトレーニングが不可欠です。
理由10:モチベーション低下が第3四半期で顕在化
IR担当者の業務は四半期決算サイクルに強く影響されます。決算発表前後は極度の繁忙期となり、学習に割ける時間が激減します。
一方、オンライン英会話は「毎日コツコツ」を前提としたサービス設計であり、この業務サイクルとのミスマッチがモチベーション低下を招いています。
特に顕著なのが「第3四半期の壁」です。
新年度の4月に英語学習を始め、第1四半期決算発表期(7〜8月)をなんとか乗り越えても、第2四半期(10〜11月)、第3四半期(1〜2月)と繁忙期が続くうちに学習が中断し、そのまま再開できなくなるパターンが非常に多いのです。オンライン英会話の低い継続率の背景には、こうした業務特性への配慮不足があります。
IR視点のチェックポイント: 四半期決算サイクルに合わせた「学習強化期間」と「維持期間」を設定していますか?繁忙期に無理に学習を詰め込むより、計画的なペース配分が重要です。
オンライン英会話の限界を超える3ステップ戦略【Bizlangl流】
オンライン英会話の限界を認識した上で、IR担当者はどのような戦略をとるべきでしょうか。
ここでは、「IR担当者向け英語講座」を提供するBizlanglのメソッドに基づき、具体的な解決策と学習ロードマップを提示します。
STEP 1|自社IR資料 × 基礎インプットブースト
IR英語習得の第一歩は、「自社の言葉」で語る力を養うことです。汎用的な英会話教材ではなく、あなたの会社の決算説明資料、有価証券報告書、アニュアルレポートこそが最高の教材となります。
Bizlangl流のアプローチでは、まず受講者の自社IR資料を徹底分析し、頻出する専門用語と表現パターンを抽出します。
たとえば、製造業であれば「稼働率(Capacity Utilization)」「原材料費高騰(Raw Material Cost Increase)」といった業界特有の語彙が重要になりますし、IT企業であれば「ARR(Annual Recurring Revenue)」「チャーンレート(Churn Rate)」といったSaaS特有の指標が必須となります。
この段階で重要なのは、「インプットなきアウトプット」の限界を認識することです。多くのオンライン英会話は「とにかく話す」ことを推奨しますが、言語習得理論によれば、十分なインプット(読む・聴く)なしにアウトプット(話す・書く)の質は向上しません。Bizlanglでは、レッスン前に自社資料の英語版を精読し、米国競合他社のEarnings Call Transcriptをシャドーイングするなど、体系的なインプットブーストを組み込んでいます。
STEP 2|IRプロ+ネイティブ講師の本番シミュレーション
基礎インプットで土台を固めた後は、実践的な「本番シミュレーション」に移行します。ここがBizlangl流の真骨頂であり、一般的なオンライン英会話との決定的な差別化ポイントです。
Bizlanglの講師は、単なる英語教師ではありません。金融機関出身者、元IR実務担当者など、IR業務の現場を知り尽くした専門家で構成されています。
本番シミュレーションでは、以下のような実践的シナリオを設定します。
シナリオ例1:Earnings Call模擬演習 受講者がCFO役として決算説明を行い、講師がアナリスト役として質問を投げかけます。「増収減益の理由を3分で説明してください」「来期のGuidanceについて、為替前提を教えてください」といった本番さながらの質疑応答を繰り返すことで、即興対応力を鍛えます。
シナリオ例2:株主総会Q&A対策 株主総会で想定される質問(業績に関する質問、経営戦略に関する質問、ガバナンスに関する質問など)をリストアップし、それぞれに対する模範回答を作成・練習します。特に海外株主からの英語での質問を想定し、通訳を介さず直接回答する訓練を行います。
すべてのシミュレーションは録画され、後からレビューすることで自分の癖や改善点を客観的に把握できます。「あのフレーズは伝わりにくかった」「この数字の説明が曖昧だった」といった具体的な指摘を受けることで、着実にスキルが向上していきます。
STEP 3|パーソナライズPDCA × 成果モニタリング
IR英語習得は一朝一夕にはいきません。継続的な改善サイクル(PDCA)を回し続けることが、長期的な成功の鍵となります。Bizlanglでは、受講者一人ひとりの課題と目標に合わせた「パーソナライズPDCA」を導入しています。
まず、学習開始時に詳細なアセスメントを実施します。「現在の英語力レベル」「IR業務における具体的な課題」「達成したい目標と期限」を明確化し、それに基づいて個別の学習計画を策定します。
たとえば、「3ヶ月後の決算説明会で、Q&Aパートを一人でこなせるようになりたい」という目標であれば、そこから逆算して週ごとのマイルストーンを設定します。
ケーススタディ:
匿名企業A社 CFO(40代男性)のインタビュー抜粋
IRのためのカリキュラムがしっかりしている上に、会社の説明をするためのスクリプトのレビューをしっかりしてくれたことがとても良かったです。
よくある質問(FAQ)
Q1:自社資料はどのように使われますか?
A: 受講者ご本人のプレゼン資料、決算説明書、IRスクリプトなどをご共有いただき、内容理解・英訳・音読練習などの教材として活用します。機密保持契約(NDA)も対応可能ですので、安心してお預けください。
Q2:受講料はIR部門の研修費として計上できますか?
A: はい、法人契約による請求が可能です。多くの企業でIR担当者向け英語研修は「人材育成費」または「IR活動費」として計上されています。詳細は無料カウンセリングにてご案内いたします。
Q3:対面でのレッスンは可能ですか?
A: 原則としてすべてオンライン(Zoom)で対応しております。国内外問わずどこからでも受講可能で、録画共有による復習や自習もしやすい設計となっております。
▼ IR担当者向け英語講座のご紹介

海外投資家との対話において、最も避けるべきは準備不足による不適切な対応です。質問の意図を理解できなかったり、不正確な情報を伝えてしまったりすることは、企業への信頼を損なう可能性があります。
一方で、適切な準備と訓練によって、明確で誠実な回答ができれば、それが投資家との信頼関係構築の基盤となります。
本番でうまく答えられなかったら…そんな不安が少しでもある方へ
海外投資家との1on1やインタビューでは、事前に想定されるQ&Aを準備していたとしても、その場で英語で伝える力が問われます。
とはいえ、IR業務で忙しい中、英語の準備に多くの時間は割けない。
そんな現場の声に応えるために作られたのが、「IR担当者向け英語講座」です。
✅ 自社IR資料を教材にする実践演習
✅ 実際の海外投資家がよく使う表現や質問パターンを網羅
✅ ネイティブ講師と1on1形式でのトレーニングも可能





