東証の英文開示義務化が進む中、突然IR部門への異動を命じられ「英語ができないのにどうすれば……」と途方に暮れている方は少なくないでしょう。
海外投資家とのミーティング、決算短信の英訳、英語での想定Q&A整備、次々と押し寄せる業務を前に、キャリアそのものが揺らぐような不安を感じているかもしれません。
しかし結論から言えば、IR担当者に求められているのは「完璧な英語力」ではありません。本当に必要なのは、投資家に伝わるロジックを組み立てる力と、自分の業務に直結する英語表現だけに集中する戦略的な学び方です。
この記事では、課題の本質、キャリアへの影響を示す客観データ、そして今日から実行できる具体的なアクションプランをお伝えします。
Contents
「英語ができない自分はIR失格なのか」その焦りの正体
異動・転属で突然求められる英語力というプレッシャー
東証がプライム市場上場企業に段階的に導入している英文開示の義務化により、英語力はほぼすべてのIR担当者にとって避けて通れないスキルとなりました。とりわけ深刻なのは、社内異動でIR部門に配属された方のケースです。
財務や経理の経験は十分にあるのに、「英語」の一点だけで実力を否定されるような感覚に陥ってしまう。しかも実務には待ったがなく、ある調査では88%もの企業が英文開示の最大課題として「迅速性」を挙げています。
IR実務のプロでも英語に苦しんでいる人は多い
あるIR担当者は、新卒直後のTOEICで下から3番目という結果に打ちのめされ、何度も英語学習に挑んでは挫折を繰り返したと語っています。
当時は不動産会社に勤めていたことを口実に「英語なんかもう知らない」と宅建取得に逃避したこともあったそうです。
複雑な財務データを扱い、国内の機関投資家と高度な対話をこなすプロフェッショナルでも、「英語」の壁の前では自信を持てなかった——こうした経験は決して珍しくありません。問題は能力の有無ではなく、学び方の方向性が業務の実態と合っていないことにあるのです。
英語コンプレックスの根本原因は「学習法のミスマッチ」にある
多くのIR担当者が挫折する最大の原因は、汎用的な英語学習法にいつまでも縛られていることです。海外IR支援の専門家も、「単語帳や汎用的なビジネス英会話教材をやり込むこと」はIR実務では遠回りだと指摘し、自分が話すべき文脈で使う表現だけに絞り込むことを推奨しています。
この「学習法のミスマッチ」こそが、繰り返し挫折を生む構造的な原因です。
英語力の前に知るべき本当のボトルネック、語学力とコンテクスト変換力の違い

日本語資料の直訳が海外投資家に響かない構造的な理由
IR担当者が英語対応で「手応えが薄い」と感じる原因の多くは、英語力ではなく情報設計のギャップにあります。日本のIR資料は、国内市場の文脈共有を前提とした「ハイコンテクスト」な構成が一般的です。
結論が文書の最後に置かれたり、定性的な努力とプロセスが財務数値と混在して語られたりする。この構成をどれだけ正確な英語に翻訳しても、論理的因果関係と資本効率を冷徹に追求する海外機関投資家には真意が伝わりません。
投資家が求めているのは流暢さではなく「論理と数値のストーリー」
海外投資家との対話で問われるのは、発音の美しさではなく、自社のエクイティ・ストーリーを論理と数値で構築できるかどうかです。
「なぜ利益率が改善したのか」を問われた際に、コスト削減なのかプロダクトミックスの改善なのかを明確に切り分けて説明できること。これは語学力とは独立したビジネスロジックの構築力です。
IR担当者にとっての最優先課題は、自社の事業戦略を「結論先行・明確な因果関係・定量的根拠」というグローバルスタンダードの論理構造で再設計する力を身につけることです。
「英語対応しているのに手応えがない」の正体はここにある
「英文資料は出しているのに反応が薄い」この悩みの正体は、翻訳の品質ではなく翻訳の元ネタとなる日本語資料の論理構造にあることが大半です。
元の日本語資料の段階から「結論を最初に」「数値で裏付け」「因果関係を明示」を組み込んでおけば、翻訳の品質も投資家との対話の手応えも劇的に変わります。この「コンテクスト変換」という発想が、英語IR対応の成否を分ける決定的な分岐点です。
データで見る英語力がIR担当者のキャリアと年収を左右する現実
TOEICスコア帯別にみる年収レンジ、600点を超えると何が変わるか
人材市場のデータは、英語力とキャリアの相関を明確に示しています。
| TOEICスコア帯 | ボリュームゾーン(年収) | 平均年収 |
| 599点以下 | 550万〜750万円程度 | 740万円前後 |
| 600〜700点 | 600万〜800万円程度 | 800万円前後 |
| 700〜800点 | 600万〜800万円程度 | 830万円前後 |
| 800〜900点 | 600万〜850万円程度 | 890万円前後 |
| 900点以上 | 650万〜900万円程度 | 910万円前後 |
600点を超えた段階で平均年収が約60万円上昇し、その後も着実にプレミアムが加算されます。労働市場は英語力を企業価値向上に直結するコア・コンピタンスとして明確に値付けしています。
参考:JAC Recruitment「英語は転職で有利になる?」
求人市場が語る「IR×英語力」の市場価値
実際の求人では、大手メーカーのIR企画チーム(リーダークラス)で年収650万〜850万円、IR担当部長クラスでは年収1,050万〜1,399万円のレンジが提示されています。日本の株式市場では外国人投資家が株式の約3割を保有し、売買シェアの約7割を占めており、この圧倒的な影響力を持つ相手との対話力が転職市場でもプレミアムとして評価されています。
参考:Tiglon Partners「IRの転職に必要なスキルとは?」
「英語不要」のポジションに逃げ込むことの長期リスク
「語学力不要」のIR求人も一定数存在しますが、資本市場のグローバル化は不可逆的なトレンドです。英語不要ポジションの多くは国内事業に限定された業務に偏っており、高付加価値な業務への参画機会は構造的に制限されます。一時的な安心と引き換えに、自分のキャリアの天井を低い位置に固定してしまうリスクは冷静に認識すべきです。
今日から始められるIR英語の実践ロードマップ
ステップ1 汎用英語を捨て「自社のIR文脈」だけに全振りする
汎用的な英単語帳を手放し、自社のIR業務で実際に使う表現だけにリソースを集中させましょう。
| 優先すべき表現の種類 | 具体例 |
| 業界専門用語 | 自社の事業領域に固有の英語表現 |
| 財務・会計用語 | revenue、operating profit、ROE、ROIC など |
| IR頻出動詞 | drive、deliver、achieve、improve、mitigate など |
| プレゼン構文 | The primary driver of… is…、We expect… driven by… など |
「話したい文脈で使う表現だけ」に絞り込むことで、汎用学習とは比較にならないスピードで実務に直結する英語力が身につきます。
ステップ2 AI翻訳を武器にして翻訳業務を仕組み化する
高精度なAI翻訳ツールを活用し、定型的な翻訳業務を仕組み化すれば、自分の時間を「投資家との対話準備」に振り向けることができます。ただし、AI翻訳の出力をそのまま使うことには注意が必要です。
主語の欠落や時制の不適切な選択など、ビジネス文書として致命的なミスが発生しやすい落とし穴があります。具体的なリスクと対処法は「AI翻訳のビジネス英語、本当に大丈夫?ネイティブが指摘する7つの落とし穴と対策」で詳しく解説しています。
IR担当者に求められるのは、AIが生成した英文を「経営陣の意図と合致しているか」という視点で監督・編集する力です。翻訳者からエディターへ、この役割転換を意識するだけで、英語への心理的ハードルは大きく下がります。
ステップ3 投資家との「対話力」を鍛える実践トレーニング
AI翻訳で「資料の英語化」が容易になった分、むしろ負荷が増しているのが投資家との直接的な対話です。
まず取り組むべきは、自社の業績説明を英語で構造化した「想定Q&A集」の整備。投資家の質問を「何を聞かれたか」ではなく「なぜそれを聞いているのか」まで分解して準備することで、想定外の質問にも応用が利くようになります。
さらに効果的なのは、実際のミーティングを想定したロールプレイング形式のトレーニングです。
何から手をつけるべきか 優先順位の判断基準
「全部やらなきゃ」と思った瞬間が挫折への第一歩です。自分の業務で最も差し迫ったスキルから一つずつ攻略するのが唯一の現実的な道です。
| 優先すべきスキル | こんな業務が直近にある場合 | 具体的な着手アクション |
| ライティング | 決算短信・適時開示の英訳 | AI翻訳+編集ワークフローの構築 |
| リーディング | 海外同業他社の調査 | 同業他社のAnnual Reportを定期精読 |
| スピーキング | 海外投資家との1on1 | 想定Q&A整備+ロールプレイ練習 |
英語コンプレックスを乗り越えたIR担当者に共通する考え方
完璧な英語は最初から目指さない——「伝わるIR英語」への発想転換
英語コンプレックスを克服したIR担当者に共通するのは、「ネイティブのように話すこと」を最初から目標にしていない点です。
彼らが目指したのは、自社の戦略と財務方針を投資家が理解できるロジックで伝えきる「伝わるIR英語」という実用的なゴールでした。前述のIR担当者も、IR文脈に必要な語彙と構文に的を絞った学習で約2年半でTOEIC870点まで到達しています。TOEICはコンプレックスを解消するきっかけにはなりますが、業務の成果を左右するのは投資家に伝わるコミュニケーションができるかどうかです。
挫折を繰り返した人ほど伸びる 目標の細分化とマイルストーン設計
「英語ができるようになる」という漠然としたゴールでは途中でモチベーションが枯渇します。
「今月中に業績サマリーを英語で3分間説明する」「来週までに想定Q&Aを5問分準備する」というように、業務に紐づいた小さなマイルストーンを設定することで、着実な前進の実感が得られます。
すべてを同時に高めようとする無謀な計画こそが過去の挫折の原因です。過去の失敗は、正しい方法にたどり着くための必要なプロセスだったのです。
IR英語に特化したトレーニングという選択肢【ビズラングル】
汎用英会話ではなく「IR英語」専門の講座が必要な理由
投資家が使う専門用語、決算説明会特有のQ&Aパターン、エクイティ・ストーリーの構築法、これらは一般的な英会話スクールではカバーされない領域です。
だからこそ、IR実務の文脈に完全に特化したトレーニングが効果を発揮します。
自社のIR資料を教材に使い、投資家ミーティングを想定したロールプレイで鍛える「現場直結型」のアプローチこそ、限られた時間で最大の成果を出す方法です。
IR経験者×ネイティブ講師のW体制で実践力を鍛える

ビズラングルは、IR担当者のための英語トレーニングに特化した講座を提供しています。
プログラム設計者は楽天の財務部で5年間IR業務に従事し年間400件超の海外機関投資家対応を経験したIR実務のプロ。実践トレーニングを担当するのは、ウォートンビジネススクール卒・ゴールドマン・サックスNY出身のネイティブ講師です。
受講者の自社IR資料をそのまま教材に使うため、トレーニングがそのまま翌日の業務に直結します。髙島屋様、住友ベークライト様、チェンジホールディングス様など上場企業での導入実績があり、英語レベル不問で初心者から受講可能です。
次の一歩を踏み出すために
英文開示義務化は大きな負荷ですが、同時にキャリアを次のステージへ引き上げる投資機会でもあります。「英語ができない」と立ち止まるのではなく、「正しい戦略で、必要な英語から攻略する」という発想への切り替えが第一歩です。
IR英語に特化したトレーニングに興味をお持ちの方は、ぜひビズラングルの無料相談をご活用ください。






