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海外投資家の英語が聞き取れない|初任IR担当者が押さえるリスニング対策5つのポイント

海外投資家との面談を終えたあと、「相手が何を聞いていたのか、結局わからないまま終わった」という感覚が残る方は少なくありません。資料は英語で用意し、想定問答も読み込んだ。それでも本番で耳が追いつかないIRを担当して日が浅いうちは、この一点で自信を失いがちです。

けれど、海外投資家の英語が聞き取れない原因は、耳の性能や語彙の量ではありません。音が拾えていないのか、単語は拾えても意味に変換できていないのか、次に来る話が予測できていないのか。症状は同じでも、対策はまったく違います。

この記事では、IR面談に絞ってリスニングが崩れる構造を分解し、原因の切り分けから立て直し方までを5つのポイントに整理しました。

海外投資家の英語が聞き取れないのは、耳の問題ではない

リスニングは、音を拾う力だけで成り立つものではありません。人は聞こえた音の一部と、次に来る内容の予測を組み合わせて意味を再構成しています。IR面談で崩れるのは、この予測の側です。

「聞き取れない」瞬間に起きている3つのこと

症状そのとき起きていること効く対策 
音がひとかたまりに聞こえる単語同士がつながり、一部の音が消えている音声変化の理解と、自分で発音する練習
単語は拾えるが意味がわからない語は聞こえても、IRの文脈に結びついていない頻出表現を英語のまま文脈ごと覚える
最初は追えたのに途中で落ちる次に来る内容を予測できず、処理が追いつかない質問の型と論点を事前にストックする

3つのうち、初任のIR担当者がもっとも多くつまずくのは3番目です。日本語の面談なら、相手が話し始めた時点で「これは成長性の話だな」と見当がつきます。その見当が英語では立たないため、一語一語を拾いにいくことになり、処理が飽和して途中で落ちてしまうのです。

闇雲に英語を聞く時間を増やしても、リスニングの手応えは変わりにくいでしょう。自分がどの層で落ちているのかを先に見極めることが、遠回りに見えていちばん確実な近道です。

相手はネイティブスピーカーとは限らない

見落とされがちなのが、聞き取る相手の側の条件です。日本IR協議会の第32回「IR活動の実態調査」(2025年)で、海外IRを行う企業にコンタクト先の所在地域を聞いたところ、最多はシンガポールの92.3%でした。米国85.1%、英国79.8%、シンガポールと中国本土を除くアジア・大洋州73.7%と続きます。

面談で耳にする海外投資家の英語は、教材のアメリカ英語やイギリス英語だけではないということです。母語の影響を受けた発音、独特のリズム市販のリスニング教材が扱わない音が実務では相当な割合を占めます。

年間コンタクト件数の加重平均も81件(前回61件)に増えました。聞き取れないのは耳のせいではなく、想定している音の幅が狭いからです。

参考:日本IR協議会「2025年『IR活動の実態調査』結果まとまる」

ポイント1|「音が拾えない」のか「先が読めない」のかを切り分ける

対策を選ぶ前に、自分がどこで落ちているかを判定します。材料は、直近の面談を思い出すだけで足ります。

単語は聞こえたのに意味がわからないとき

「growth と margin は聞こえた気がするけれど、何を聞かれたのかわからない」という状態なら、音は拾えています。落ちているのは、語と語をIRの文脈でつなぐ段階です。

必要なのはリスニングの反復ではなく、文脈を持った表現を英語のまま増やすことです。sustainable が「その水準が続くのか」を問う語であること、one-off が一過性の要因を指すこと。投資家がどの局面でその語を持ち出すかまで入っていれば、断片からでも論点が立ち上がります。

この状態で発音練習をしても効果は表れにくいでしょう。音は届いているのに、受け取る側の引き出しが用意されていないのが原因だからです。

音そのものがひとかたまりに聞こえるとき

「早口すぎて音が団子になっている」と感じるなら、落ちているのは音の層です。英語では、単語が単独で発音されるときの音と、文の中で連続したときの音が変わります。この変化を知らないまま聞くと、知っている単語でも別の音として耳に届きます。

音声変化起きること例 
連結語尾の子音が次の語頭の母音とつながるpick up が「ピックアップ」ではなく「ピカップ」に近づく
脱落子音が続くと片方がほとんど消えるnext quarter の t がほぼ聞こえなくなる
弱形機能語が短く弱く発音されるcan, of, for, to は母音があいまいになる

IR面談で頻出する year on year、a lot of、going to、want to は、いずれもこの変化が起きる組み合わせです。一度整理しておくだけでも、「知らない単語だった」と誤解する回数は減ります。

ポイント2|自分で言えない音は、聞き取れない

「発音できない音は聞き取れない」とよく言われます。これは半分正しく、半分は因果が逆です。正確には、その音を頭の中で他の音と区別できていないために、聞き取ることも発音することもできていないという状態です。

発音の練習がリスニングに効く理由

聞き取りは、耳に届いた音を自分が持っている音のモデルに照合する作業です。モデルが粗ければ照合は失敗します。そして声に出して発音することは、このモデルを作り直すもっとも手軽な方法です。

日本語話者にとって難しいのは、個々の子音よりもリズムのほうです。日本語はほぼ等間隔に音を刻みますが、英語は強く読む語だけを等間隔に置き、あいだを圧縮します。この圧縮された部分が「聞こえない音」の正体です。自分で同じリズムで言えるようになると、圧縮が起きること自体を予測でき、そこに何が入っていたかを推測できるようになります。

まずはIR頻出語を「言えるか」から確認する

網羅的な発音矯正は要りません。IR面談で頻繁に出てくる語に絞れば、確認すべき数は限られます。

allocation、amortization、guidance、leverage、maturity、volatility、headwindsこのあたりを辞書の音声と並べて声に出してみてください。強勢の位置がずれている語や母音の数が違う語は、投資家が口にしたときも自分のモデルと一致せず、素通りします。

財務・決算まわりの用語そのものの意味や英訳は【2025年版】IR英語専門用語70語一覧にまとまっています。ここで扱っているのは意味ではなく、音のほうです。

シャドーイングの教材は、自社の英語資料でよい

音のモデルを作る練習として広く知られているのがシャドーイングです。聞こえた英語を少し遅れて声に出して追いかける方法で、意味を考える余裕がないぶん音に集中できます。

市販の教材は要りません。自社が公開している英語版の決算説明資料や経営陣の英語スピーチがあれば、扱う数字も固有名詞も面談で使うものと同じで、それが最良の教材になります。1回15分、同じ素材を1週間繰り返すほうが、毎回新しい素材を1回ずつ聞くよりも定着します。学習サービスの選び方はオンライン英会話がIRで役に立たない10の理由でも触れられています。

ポイント3|投資家が使う英語を、先に耳に入れておく

リスニングの負荷を下げる方法は、聞く力を上げることだけではありません。「初めて聞く表現」の数を減らせば、同じ耳のままでも聞き取れる量は増えます。

同業の海外企業のEarnings Callを聞く

海外の上場企業の多くは、決算説明会(Earnings Call)の音声や動画をIRサイトで公開しており、書き起こしを載せている企業もあります。同じ業種の企業を1社選び、質疑応答だけを聞いてみてください。

価値があるのは経営陣の回答ではなく、アナリストの質問のほうです。どんな言い回しで切り出し、どの語で論点を絞り、どう追加質問を重ねるかその型は業種を超えて共通しています。書き起こしがあれば、先に読んでから音声を聞くと「この音がこの語だったのか」という照合ができます。海外投資家の英語が聞き取れない状態から抜ける、もっとも実務に近いリスニング練習です。

自社の英文資料を、読む教材から聞く教材に変える

英語版の決算短信や説明会資料は、多くの担当者が「作るもの」「確認するもの」として扱っています。しかしこれらは、面談で自分が話す内容そのものです。

読み上げソフトに読ませて通勤中に聞く、あるいは自分で音読して録音する。どちらでも構いません。目で追えば理解できる文章が、耳だけでは追えないという事実に気づけるはずです。その差がそのまま、面談で聞き取れない量になります。黙読で理解できることと、音で処理できることは別の能力なのです。

質問の型を、英語のまま20本ストックする

面談で投資家が投げてくる質問は無限ではありません。成長の持続性、利益率の変化要因、資本の使い道、計画との差論点は限られています。

大切なのは、日本語の想定問答を作ってから英訳しないことです。英訳文は投資家が実際に使う言い回しと音の形が違うため、聞き取りの助けになりません。

Earnings Callで拾った質問文を、そのままの英語で書き留めてください。20本ほど溜まると、面談で「この型だ」と気づく瞬間が出てきます。事前準備の全体像は海外投資家からの取材、英語で即答できますか?を参考にしてください。

ポイント4|聞き取れなかったその場で、相手の話し方を変えてもらう

準備を尽くしても、本番で聞き取れない場面は訪れます。そこで問われるのは英語力ではなく、その状況をどう動かすかという判断です。

「もう一度」ではなく「言い換えて」と頼む

聞き取れなかったとき、多くの人は「Sorry?」と返します。ところが同じ文をもう一度聞いても、聞き取れる確率はさほど上がりません。原因が音ではなく語彙や文脈にあるなら、同じ音が繰り返されるだけだからです。

有効なのは、表現を変えてもらう依頼です。「Could you put that another way?」と頼めば、投資家は別の語彙と、たいていは短い文で言い直してくれます。箇所が特定できているなら「Could you repeat the last part?」と範囲を限定すると精度が上がります。

曖昧なまま答え始めて論点を外すことのほうが、投資家の時間を奪います。聞き返しや保留の言い回しは海外投資家とのミーティングで使える英語フレーズ24選に場面別でまとまっています。

相手の話す速度は、自分の話す速度に引かれる

会話をしている二人の話し方は、無意識のうちに互いへ近づいていきます。こちらが早口で相づちを打ち続ければ相手の速度も上がり、こちらが落ち着いた速度で話せば相手も歩調を合わせやすくなります。

面談の冒頭は、この調整がもっとも効く時間帯です。自己紹介や会社概要の説明を、意識してゆっくり、区切りを置いて話す。それだけで、その後の質疑応答で返ってくる英語の速度が変わってきます。速度を落としてほしいと直接頼むより角が立たず、効果も続きます。

オンライン面談では、音声環境が聞き取りの半分を決める

同じ調査では、ワンオンワンミーティングを実施する企業が70.2%(前回65.7%)に増えました。決算説明会もリモート開催とハイブリッド開催の合計が本決算で81.5%です。相手が海外にいる以上、面談が画面越しになるのは避けられません。

オンラインでは音声が圧縮され、高い音域が削られます。ネイティブでも聞き取りづらい条件ですから、非ネイティブの担当者には負荷が跳ね上がります。

有線イヤホンを使う、外部マイクを口元に寄せる、通信が不安定なら映像を切って音声を優先するこの程度の対処で聞き取れる量は変わります。数字が怪しいときはチャット欄に書いてもらうのも有効です。環境を整えるだけで解決する部分は、思いのほか大きいといえます。

ポイント5|面談を録音して、落ちた瞬間を特定する

リスニングには、本番でしか鍛えられない部分があります。ただし記憶に頼ると「なんとなく難しかった」で終わり、次に活きません。

聞き取れなかった30秒だけを聞き直す

面談を録音・録画しておき、後日聞き直します。コツは全体を通して聞かないことです。意味を取り損ねた瞬間だけを探し、その前後30秒を繰り返し聞きます。

その場で聞き取れなかった音が、落ち着いて聞くとあっさり聞き取れることは珍しくありません。それがわかれば、原因は語彙ではなく本番の処理速度だったと判定できます。逆に何度聞いても聞き取れないなら、知識として足りていない部分です。同じ音源で「その場」と「あと」の差を測れる点が、この方法の強みです。

なお録音の可否は相手や社内規程によるため、事前の確認は欠かせません。

落ちた原因を3つに分類して記録する

日本IR協議会の調査では、IR実施企業の90.0%が株主・投資家の意見を社内へ報告する仕組みを持っています。ただしそこに残るのは投資家の発言であって、担当者自身がどこで聞き落としたかは記録されないため、自分用の記録が別に要ります。

書き留めるのは3点です。投資家が使った実際の英語、聞き取れなかった理由、次はどう対処するか。理由は「音が拾えなかった」「語を知らなかった」「文脈が読めなかった」に分類してください。音が原因ならポイント2の発音へ、文脈が原因ならポイント3の型のストックへ分類しておけば、次に何をすべきかが決まります。

IR実務の文脈でリスニングを鍛えるという選択肢

海外投資家の英語が聞き取れるようになるのに必要なのは、英会話の総量ではなく、IRの文脈に沿った訓練です。一般的な英語学習では、自社の英語資料を教材にすることも、投資家が使う質問の型を扱うこともありません。

ビズラングルは、IR担当者のための英語トレーニングに特化した講座を提供しています。

プログラム設計者は楽天の財務部で5年間IR業務に従事し年間400件超の海外機関投資家対応を経験したIR実務のプロ。実践トレーニングを担当するのは、ウォートンビジネススクール卒・ゴールドマン・サックスNY出身のネイティブ講師です。

受講者の自社IR資料をそのまま教材に使うため、トレーニングがそのまま翌日の業務に直結します。髙島屋様、住友ベークライト様、チェンジホールディングス様など上場企業での導入実績があり、英語レベル不問で初心者から受講可能です。

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