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海外投資家の前で英語に詰まる|初任IR担当者が乗り越える5つのポイント

海外投資家との面談を控えて、「質問が聞き取れなかったらどうしよう」「頭が真っ白になって沈黙してしまったら」という不安を抱えている方は少なくありません。とくにIRを担当して日が浅いうちは、その不安が英語力への自信のなさと直結しやすいものです。

けれど、面談で詰まる原因は英語力だけではありません。

質問を英語のまま処理しようとしていること、日本語の語順のまま話し始めていること、そして数字を英語の桁に置き換える処理が追いついていないことこの3つが重なったときに、言葉は出てこなくなります。

この記事では、初任のIR担当者がつまずく構造を分解し、次の面談から使える5つのポイントを整理します。詰まったときの立て直し方から、経験を次に活かす仕組みまでを扱います。

海外投資家の前で英語に詰まるのは、英語力だけの問題ではない

まず押さえておきたいのは、「詰まる」という現象が単一の原因で起きているわけではないという点です。原因を切り分けないまま英会話の練習量だけを増やしても、面談での手応えは変わりにくいのです。

「詰まる」瞬間に起きている3つのこと

詰まり方そのとき起きていること本当の原因 
質問が聞き取れない単語を拾うことに意識が向き、論点をつかみ損ねているリスニング力よりも、想定論点のストック不足
言いたいことが組み立たない日本語で考えた文章を英訳しようとしている語彙力よりも、日本語の語順のまま話し始めていること
数字が口から出てこない「億」「兆」を英語の桁に変換する計算が挟まっている発音や語彙ではなく、桁と増減表現の変換の遅さ

この3つは対処法がまったく異なります。1つ目は事前の論点整理、2つ目は話し方の型、3つ目は変換の反復で解ける問題です。ひとまとめに「英語ができないから」と捉えると、効きにくい対策に時間を使うことになります。

通訳を立てれば解決すると考えたくもなりますが、通訳を介せば同じ時間内に交わせる往復は目に見えて減り、投資家が本当に聞きたい二の矢・三の矢が届きません。原因の切り分けが、遠回りに見えていちばんの近道なのです。

詰まっているのは、あなただけではない

日本IR協議会の第32回「IR活動の実態調査」(2025年)によれば、海外投資家向けIR活動を実施する企業は62.2%(前回56.2%)、海外投資家との年間コンタクト件数の加重平均は81件(同61件)。面談の機会そのものが、この2年で大きく増えています。

同じ調査で海外IRの今後の課題を見ると、「英語での情報開示やコミュニケーション等」が54.7%。半数を超える企業が、同じところでつまずいています。

さらに示唆的なのが、決算説明会のウェブ公開の内訳です。英語のプレゼンテーション資料は72.2%が用意している一方、Q&Aの英語開示は40.9%、動画配信は18.4%にとどまります。

英語で整っているのは「作り込める資料」であって、「その場のやり取り」は手薄なのが、いまの平均的な姿です。詰まるのは個人の資質ではなく、業界全体がまだ手をつけきれていない領域だといえます。

参考:日本IR協議会「2025年『IR活動の実態調査』結果まとまる」

ポイント1|聞き取れない質問は、聞き返さずに「再定義」して返す

質問が聞き取れなかったとき、多くの人は「Sorry?」と聞き返します。ところが、同じ質問をもう一度聞いても、やはり聞き取れないことのほうが多いのです。

論点を自分の土俵に置き直す

聞き返しても結果が変わらないのは、原因が音そのものではなく、質問の前提にある文脈の側にあるからです。有効なのは、拾えた断片から論点を組み立て、「あなたが聞きたいのはこれですか」と確認し直す返し方質問の再定義です。

「Are you asking about the drivers behind the margin improvement?」のように具体的な論点を提示すれば、投資家は Yes / No で答えるか、より噛み砕いた表現に言い直してくれます。聞き返しが相手に負担を戻すだけなのに対し、再定義は自分が答えられる領域へ会話を引き寄せる動きです。断片しか聞き取れていなくても成立するのが、この型の強みです。

沈黙を埋めるのではなく、考える時間を「宣言」する

答えの組み立てに時間が要るときは、無理に言葉で埋めようとせず、考えていること自体を口に出すほうが伝わります。「Let me think about how to put that.」と一言置けば、そのあとの数秒は”言葉に詰まった空白”ではなく”整理している時間”として受け取られます。

逆に、間を埋めるためだけに意味のない相づちを重ねると、内容の薄さのほうが際立ってしまいます。沈黙そのものは減点ではなく、沈黙の理由が伝わらないことが減点なのです。場面ごとの言い回しは海外投資家とのミーティングで使える英語フレーズ24選にまとめています。

ポイント2|日本語の順序を捨てる結論・数字・理由の順に組み替える

英語が出てこない原因の多くは、語彙の不足ではなく、話し始める順序にあります。ここを変えるだけで、同じ英語力のままでも詰まる回数は減っていきます。

「背景→経緯→結論」が英語で詰まる最大の原因

日本語のビジネス会話は、背景を説明し、経緯をたどり、最後に結論を置く構造をとりがちです。この順序のまま英語で話し始めると、結論にたどり着く前に修飾が積み上がり、途中で文が破綻します。

しかも聞き手の側は要点がなかなか出てこないため、途中で別の質問を挟んできます。そこでまた組み立て直すことになり、詰まりが連鎖するのです。日本語で考えてから英訳するというプロセスそのものが、この順序を英語に持ち込む原因になっています。

結論30秒+根拠2点に落とす

おすすめしたいのは、どの質問にも同じ骨格で答えると決めてしまうことです。最初に結論を一文で述べ、次に数字を1つ挙げ、最後に理由を2点添えるこの形なら、その場で英語に組み立てる要素は3つに固定されます。

「Margins improved mainly for two reasons.」と言い切ってから “First…, Second…” と続ければ、聞き手は残りの構造を予測できるため、多少表現が拙くても意味は通ります。型を固定することは、その場で考える量を減らすことでもあるのです。

業績が悪いときほど、結論を先に出す

説明しづらい数字を扱うときほど、背景から入りたくなるものです。ところが投資家から見ると、前置きの長い説明は「言い訳が始まった」と受け取られかねません。未達なら未達だと先に認め、要因を分解し、いつまでに何をするのかを示す。この順序のほうが、結果的に評価は下がりにくいといえます。

ここで詰まるのは英語力の問題ではなく、悪い数字を認める一文を用意していなかったからです。厳しい質問への回答例は【IR英語】決算説明会の質問・回答例20選も参考になります。

ポイント3|数字で詰まらない桁と増減表現を先に体に入れる

IRの面談で扱う言葉のうち、もっとも頻度が高く、もっとも間違えられないのが数字です。ところがここは、英会話の練習ではほとんど鍛えられない領域でもあります。

「億」「兆」を英語の桁に置き換える一手間

日本語の数字は万・億・兆という4桁区切り、英語は thousand・million・billion という3桁区切りです。区切りがずれているため、頭の中で一度計算が挟まります。この0.5秒の遅れが、面談では「詰まった」ように見えてしまうのです。

日本語英語表記読み上げ 
100万円¥1 millionone million yen
1億円¥100 millionone hundred million yen
10億円¥1 billionone billion yen
1,000億円¥100 billionone hundred billion yen
1兆円¥1 trillionone trillion yen

覚えるべきは表の全部ではなく、「1億=100 million」「10億=1 billion」の2つだけです。この2点を起点にすれば、残りは桁をずらすだけで出てきます。自社の売上高・営業利益・時価総額を英語で即答できるようにしておくと、面談で計算する場面はほとんどなくなるでしょう。

増減の言い方は3パターンに固定できる

増減の表現は無数にあるように見えて、実務で使うのは3つです。率で言うか、幅で言うか、水準で言うかこの区別さえ押さえれば足ります。

率なら「Sales were up 12% year on year.」、幅なら「Operating profit increased by ¥3 billion.」、水準なら「The margin improved to 8.2%, from 7.1%.」という形です。倍数を言いたいときは times を無理に使わず、doubled や grew 1.5-fold と表現するほうが誤解されません。

パーセントとパーセントポイントを混同しない

利益率が7.1%から8.2%に改善したとき、これは「1.1%の改善」ではなく「1.1パーセントポイントの改善」です。英語では percentage point、あるいは basis point(1パーセントポイント=100 basis points)を使って表現します。

この区別を誤ると、伸び率の話なのか水準の話なのかが伝わらず、投資家は数字を読み違えます。訂正のやり取りに時間を取られ、そこから会話が崩れることも珍しくありません。財務・決算まわりの用語そのものの英訳は、【2025年版】IR英語専門用語70語一覧にまとめられています。

ポイント4|質問の「なぜ聞かれているか」を知ると、英語は出てくる

海外投資家の質問は、思いつきで飛んでくるわけではありません。投資判断のために確かめたい論点が先にあり、その確認手段として質問が組み立てられています。背後の意図がわかれば、答えの方向は質問を聞き終える前に決まります。

成長の再現性を疑っている質問

「今期の伸びは何によるものですか」という問いは、成長率そのものを聞いているわけではありません。確かめられているのは、その成長が来期以降も繰り返されるのかどうかです。

一過性の要因なのか、構造的に積み上がる仕組みがあるのかを切り分けて答えられれば、質問の意図には応えられています。逆に、要因を並べるだけで再現性に触れないと、同じ論点を角度を変えて何度も聞かれるでしょう。詰まっているように見えて、実は同じ場所を回っているだけという状態です。

資本配分の判断を見ている質問

設備投資や自己株式取得、配当についての質問は、金額の妥当性ではなく、経営が資本をどう配分する考えなのかを見ています。海外投資家がとくに重視するのは、手元資金の使い道に優先順位があるかどうかです。

「成長投資を優先し、余剰が出た分を株主還元に回す」といった判断基準を一文で持っていれば、個別の金額を問われても同じ軸から答えられます。capital allocation という言葉が出てきたら、聞かれているのは金額ではなく考え方だと捉えてください。

計画とのギャップを確かめる質問

公表した計画と実績に差があるとき、投資家はその差を会社がどう認識しているかを確認しにきます。問われているのは、差が生じた事実の説明ではなく、計画の前提が変わったのか、実行が遅れているだけなのか、という区別です。

前提が変わったのなら計画自体を見直す話になり、実行の遅れなら取り戻す道筋の話になります。どちらの話をしているのかを最初に示すと、対話は噛み合います。頻出する質問パターンをより広く押さえたい場合は、海外投資家からの取材、英語で即答できますか?もあわせてご覧ください。

ポイント5|詰まった経験を、次の面談の武器に変える

面談は一度きりではありません。詰まった質問をそのままにするか、記録して潰しておくかで、半年後の手応えは大きく変わってきます。

詰まった質問だけを記録する

先ほどの調査では、IR実施企業の90.0%が株主・投資家の意見を社内へ報告する仕組みを持っていました。ただし共有されるのは投資家の発言であって、担当者自身がどこで詰まったかは残りません。自分用の記録は別に持つ必要があります。

書き出すのは3点で足ります投資家が使った英語の表現、自分が詰まった理由、あとから考えた回答です。理由を「聞き取れなかった」「組み立てられなかった」「数字が出てこなかった」のどれかに分類しておけば、弱点の在り処が数回分の蓄積でつかめます。面談全体を丁寧に振り返ろうとすると続かないため、詰まった部分だけに絞るのがコツです。

想定問答を「日本語で作ってから英訳」しない

多くの会社では、想定問答集を日本語で作り、それを英訳して英語版としています。ところがこの作り方だと日本語の語順と修飾がそのまま残り、面談の場では使いにくい文章になりがちです。

英語で答える質問については、はじめから英語で書き起こしてみてください。書けない部分がそのまま、本番で詰まる部分になります。機械翻訳を下訳に使う場合も、読み上げる前提にはせず、自分の言葉に置き換える工程を挟みましょう。翻訳ツールの落とし穴はAI翻訳のビジネス英語、本当に大丈夫?で詳しく扱っています。

IR実務と英語を同時に鍛えるという選択肢

海外投資家の前で詰まらなくなるために必要なのは、英会話の量ではなく、IR実務の文脈に沿った訓練です。一般的な英語学習では、自社の数字を英語の桁で即答する練習も、投資家の評価軸に沿った回答の組み立ても扱われません。

ビズラングルは、IR担当者のための英語トレーニングに特化した講座を提供しています。

プログラム設計者は楽天の財務部で5年間IR業務に従事し年間400件超の海外機関投資家対応を経験したIR実務のプロ。実践トレーニングを担当するのは、ウォートンビジネススクール卒・ゴールドマン・サックスNY出身のネイティブ講師です。

受講者の自社IR資料をそのまま教材に使うため、トレーニングがそのまま翌日の業務に直結します。髙島屋様、住友ベークライト様、チェンジホールディングス様など上場企業での導入実績があり、英語レベル不問で初心者から受講可能です。

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